廃業より売ったほうがマシ!中小企業の後継者難が問題

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中小企業庁が16年11月にまとめた「事業承継に関する現状と課題」によると、2020年頃には数十万の団塊経営者が引退時期。
直近10年を見ると法人経営者の「親族内承継」の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった「親族外承継」が6割超に達している一方で、60歳以上の経営者のうち50%超が「廃業」を予定、特に個人事業者の約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」という結果が。

業績が伸びているのに「廃業の危機」

上場企業の中で、平均年収ランキングのトップ10に4社がランキングしている業種がある。M&A(merger and acquisition:合併と買収)仲介会社だ。

ちなみに、ランキングトップはGCAで平均年収は2139万円(2016年12月期、平均年齢37.2歳)、以下2位M&Aキャピタルパートナーズ1905万円(16年9月期、31.1歳)、4位ストライク1616万円(16年8月期、343.9歳)、8位が日本M&Aセンター1418万円(17年3月期、34.7歳)となっている。

もっとも、GCAは売り手と買い手の双方から手数料を得る仲介業務は行わず、10ヵ国に15拠点を展開して、対象も大企業、グローバル案件をターゲットとしている点で中小企業のM&A仲介をメインとしている3社とは一線を画している。

しかし、GCAを除いても、トップ10に中小企業のM&A仲介会社が3社もランクインすることなど、一昔前なら考えることさえできなかったことである。逆に言えば、それだけ中小企業のM&Aニーズが高まってきている証左といえるだろう。

中小企業庁が16年11月にまとめた「事業承継に関する現状と課題」によると、2020年頃には数十万の団塊経営者が引退時期にさしかかるとされている。

また、直近10年を見ると法人経営者の「親族内承継」の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった「親族外承継」が6割超に達している一方で、60歳以上の経営者のうち50%超が「廃業」を予定、特に個人事業者の約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」とアンケートに回答しているという。

問題は、廃業予定企業のうち3割の経営者が同業他社よりも良い業績を上げていると回答し、今後10年間の将来性についても4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答している点だ。

こうした、企業業績が必ずしも悪くない企業であっても後継者が決まっていない、または廃業予定である企業が数十万社に上ると予想されており、事業承継を選択しない場合には当該企業が維持している雇用や技術、ノウハウが失われてしまう可能性が高いからだ。

国も本腰を入れ始めたM&Aによる承継

そこで、中小企業庁では、17年7月中小企業経営者の高齢化の進展等を踏まえて、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間とする「事業承継5ヵ年計画」を策定し、事業の引継ぎ手として、創業者や経営人材等とのマッチングの促進を行うことを打ち出している。

事業引継ぎ支援センターの強化もその1つ。後継者不在の中小企業の事業引継ぎを支援するため、11年度から中小企業のM&Aを行う事業引継ぎ支援事業を開始しており、これまでに事業引継ぎ支援センターを全国展開させ、発足以来約1万7000社の相談に応じて791件の事業引継ぎを実現させた。この事業引継ぎ支援センターによるマッチング件数を2000件にまで引き上げることを目指している。

中小企業の事業承継手段としてのM&Aのメリットとしては、経営者が新たな後継者にバトンタッチして引退することができ、従業員の雇用も引き続き維持されることなどが挙げられる。

一方の買収企業側のメリットとしては、新たな事業部門を最初から立ち上げる必要がなく、短期間で経営の多角化が可能となり、売上や利益増大という成長を実現できることがあげられる。

このような、後継者がいない場合の解決策の一つである中小企業のM&Aニーズは増加傾向にあり、冒頭で触れた中小企業のM&A仲介会社の隆盛もこうした現状を背景としている。

しかし、こうしたニーズが存在するにもかかわらずM&Aプレイヤーの絶対数が圧倒的に足りていないのが現状で、転職サイトを展開して業績を伸ばしているビズリーチが、得意なネットを活用してM&Aのマッチングサービスに乗り出す動きも出てきている。

“競合他社の軍門に下る”M&Aをよしとしない経営者も

オーナー社長が事業承継を考える時に、同業他社に引き受けてもらうM&Aは確かに有力な選択肢である。

しかし、実際にはこの手のM&Aに対するオーナー経営者の心理的抵抗が少なくないという指摘もある。

中小、中堅企業とはいっても、創業後様々な時代の荒波をくぐって生き残ってきた企業だけに地元では名士で通っているところが多く、M&Aによって競合他社の軍門に下るような形での事業承継をよしとしない経営者が多いというのだ。

武蔵野銀行が事業承継に課題を抱える企業経営者に自社株評価や後継者への移転方法、分散した株式の集約策などを検討して提案するサービスを始めるなど、地域金融機関も取引先の事業承継支援に力を入れてきているが、メインバンクに相談しても、ファイナンス面では相談に乗ってくれても、事業の執行まで入り込んで解決策を提示できるほどの知識を現場の銀行員が持ち合わせていないというケースがほとんどである。

そうした潜在的な成長力を持ちながら、リスクマネー、経営人材を含めた様々なリソースの不足で事業承継の壁にぶつかっている企業にとって、一考すべき相手として挙げられるのがプライベート・エクイティ(PE)ファンドだ。

PEファンドの多くは、投資事業有限責任組合の形をとる。機関投資家、年金基金等の投資家から資金を集めてファンドを組成し、運用会社のスタッフが投資先を発掘して、当該企業の株式を取得(大半は過半数)して様々な事業支援を行うことにより投資先の企業価値を高め、株式の公開や事業会社への持ち株の売却によって収益を得るというビジネスモデルである。

日本では、PEファンドというと「ハゲタカ」のイメージがつきまとう。しかし、日本の草分け的存在であるアドバンテッジパートナーズが設立されたのが1997年ですでに20年の歴史をPEファンドは刻んできている。

国内PEファンドだけでなくカーライルや最近、東芝の半導体子会社や広告大手アサツーディ・ケイの買収で名前が挙がるベインキャピタルなど外資系大手PEファンドを含めて、日本では数多くのM&A投資の実績を積み重ねてきている。ハゲタカ的なドラスチックなリストラや優良資産の切り売りで収益を上げるようなPEファンドは日本市場からすでに退場していったと見ていい。

現在、日本プライベート・エクイティ協会の正会員は30社を超えるが、大手PEファンドも近年は事業承継問題を抱えた中堅企業への投資に意欲的に取り組んでいる。

PEファンドと組む経営者の狙いとは?

PEファンドによる買収のメリットとしては、事業の潜在成長力の見極めと持続的成長戦略の策定・実行のサポート、企業の組織・風土・インフラの強化、既存経営陣の側面支援としてのマネジメント人材の紹介・招聘、さらなる成長のためのM&A及びグローバル事業展開のサポート、さらなる成長資金の提供などがある。

一方の事業承継でPEファンドと組む日本企業の最近の傾向としては、大きく3つが挙げられる。

1つ目は、創業経営者が、後継者がいないために持株全てをPEファンドに売却して、経営から退くケース。

2つ目が、若手起業家による事業承継案件である。業種的にITやソフトウエア関連産業によく見られるケースで、例えば20代で起業し、まだ30~40代という若い経営者が自社を売却して、その売却資金をベースに新たなチャレンジを行うというケースがこれにあたる。

3番目が、まだ引退する年齢でもなく事業意欲も強い経営者が、戦略的にPEファンドを巻き込んで、自力ではできない国内での成長を加速させたり、海外市場への進出、あるいは株式公開のための体制強化を狙うというケースで、言ってみればPEファンドの積極的活用型だ。
この場合は、オーナー経営者も出資するMBO(Management Buyout:経営陣による買収)という形をとることが多い。
最近は、取引先の金融機関やM&A仲介会社からの紹介で、複数のPEファンドからの提案を吟味して最も肌の合う相手と組むという経営者も増えてきている。

以上見てきたように、事業承継問題を抱える企業の規模は様々だが、一定の収益・資産を確保していれば企業規模にかかわらず事業売却は可能である。

様々な可能性のうち、どのような選択肢を選ぶのか、オーナー経営者はじっくり考える必要がある。

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